家を建てるときにお金をかけるべきポイント

家を建てる前、情報収集をしていた際に何度も耳にした言葉があります。

それは

「最初にお金をかけるか、後でお金をかけるか」ということです。

大工さんの知り合い、材木会社の友達、家を数件建てた経験のある人など、複数の人から同じような助言をもらったのが印象に残っています。

まず初めに、家そのものの構造にお金をかけ、しっかりとした建物を建てれば、後は定期的なメンテナンス位で維持費があまりかからないという事です。

逆に、目先の安さに飛びつき、安普請の建売住宅を買って10年後に大規模なリフォームをする羽目になった人の話も聞きました。

家の構造や建材の耐久性、メンテナンス性など、自分で勉強し理解したうえで決めないと後々後悔することになります。


ハウスメーカーや工務店のセールストークを真に受けるのも危険です。

建築業界に限らず、自分の属する業界について勉強不足な「専門家」は大勢います。

その業界に属しているだけで、自分は知識があると勘違いをしているパターンです。長い年数その仕事をしていても、更に進化しようと知識の吸収を続けていかないと取り残されていくことになるでしょう。
家電量販店などでも、メーカーのホームページを見ただけの素人よりも知識が浅い店員をよく見かけますね。

家を建てるときには、安心して任せられる本当の専門家に任せたいものです。



もちろん、自分でも納得いくまで調べることが大切です。

ネットでも情報は収集できるし、専門雑誌や書籍もたくさんあります。

あとはやはり人に合って話をするのも貴重な経験を聞く事ができますね。

身近で「家を建てたことのある人」を見つけるのはそう難しいものではないはずです。


家を建てた先輩たちに話を聞いた事をまとめてみました。

軒を深く出す

軒(のき)は屋根が壁から張り出した部分ですね。

最近の家は軒をあまりとらない家が多いですが(軒が全くない箱型の家もよく見ますね)、軒には大切な役割があります。

まず、外壁を雨や日光から守ること。

軒が無い家だと、窓枠から黒く雨だれの線が垂れているお家もよく見かけます。
壁が汚れにくくなるのはもちろん、壁内への雨漏りやカビ・コケ・腐れなども起こりにくくなります。

また、軒が深いと外壁に直射日光が当たらないので、紫外線による劣化を防いでくれます。

現在、外壁の主流となっているサイディングですが、紫外線による劣化で表面が粉を吹いてきたり、つなぎ目のコーキングが固くひび割れてきます。軒によって外壁を守ることで、塗り替えなどのメンテナンスの負担を減らすことができます。

庇(ひさし、窓や出入り口の雨避け)もあるといいですね。


もう一つの軒の重要な役割は、日光のコントロールです。

夏の直射日光が窓から入り込むと、室内は温室状態になります。夏場、冷房をつけている時に外から入ってくる熱の70%以上が窓からと言われています。

夏の太陽は上から照らしますので、軒が深く出ていれば窓に直射日光が入らなくなります。

これだけでも冷房効率は上がり、「夏涼しい家」になります。

逆に冬になると太陽は傾き、軒を避けてお日様の光が入ってきます。夏とは違い冬の日光はとてもありがたく膨大な熱エネルギーですから、それを遮ることなく存分に取り入れる事ができます。

断熱材などが無かった昔の家ではこのような軒を活用した工夫が見られます。


断熱性の高い窓を選ぶ

軒の件でも書きましたが、窓は熱の出入り口です。

どんなに断熱材を分厚く壁に入れても、窓に断熱性がなければ意味がありません。

冬の暖房使用時、室内の熱の50~60%近くが窓から外に逃げていくと言われているので、特に寒い地方では窓にお金をかけた方が良いでしょう。

もちろん、窓の断熱性が上がると、夏場の冷房効率も挙がります。

窓のガラスを二重にするのも大事ですが、一番重要なのは窓枠の素材です。

以前は加工の容易さとコストの面から、ほとんどの家がアルミサッシを使っていました。

アルミサッシは気密性は取りやすいのですが、断熱性はほぼ無いと言ってもいいでしょう。

冬にアルミサッシの窓のそばに行くとひんやりと冷気を感じますし、サッシは結露でびちょびちょになります。結露は窓周辺のカビや腐れの原因にもなりますので、家の寿命を縮める事になります。

私は樹脂よりも断熱性が高い木製サッシでトリプルガラスを選びましたが、木製サッシは高価で重量があり、樹脂に比べてメンテナンス性に劣るというデメリットもありますので、樹脂サッシのペアガラス窓が一番バランスが良いのではないでしょうか。

今では樹脂製のサッシで素晴らしい性能の物が出ていますので、木製サッシとの断熱性の差は数値上ではそれほど無いようです。

断熱性の高い窓は遮音性もありますので快適な家になるでしょう。


基礎は大切

家が乗る重要な土台です。

今では地震に強く湿気も上がりにくいベタ基礎が主流になっているようです。

更にこだわるのであれば、基礎の高さは高い方が良いでしょう。最低でも40㎝は欲しいところです。

基礎が低いと、地面に落ちて跳ね返った雨が腐朽菌(木を腐らせる菌)を含んだ土を外壁に付着させてしまいます。

高い基礎は床下の点検もしやすくなります。

また、基礎に乗っかる土台の木材はヒノキやヒバなどの虫や腐れに強い木が良いでしょう。

薬剤を加圧注入した木材を土台として使う場合もありますが、薬剤の効果は長く続かないそうです。

土台の木はそう簡単に取り換えることのできないものですから、最初からしっかりとした物を使いたいですね。

長く住むのであれば、構造部分はしっかりと考えたいものです。


地盤は大丈夫か

ベタ基礎にして耐震強度の高い家を建てても、建物が載っている土地の地盤が弱ければ意味がありません。

近年、大雨による被害が多発していますが、これも立地や地盤の影響によるところが多いように見えます。

川のそばであったり、土地が低くなって水がたまりやすくなっている場所、盛り土をして崩れやすくなった造成地などで被害が大きくなっています。

昔であれば先人からの言い伝え等で家を建てるべき場所ではなかった所に、大規模な土木工事の手が加わりニュータウンとしてどんどん土地が分譲されています。

しかし、いくら土を盛ったり杭などを打って地盤改良をしても、元々の地盤の性質はそう変わることはありません。

綺麗に整った土地に見えても、いざ大雨や地震があった時には浸水したり液状化現象が起こることもあり得ます。

土地を手に入れる前におすすめしたいのは、年配の方のお話を聞いたり、古地図をチェックすることです。

昔の地震の被害状況や大雨洪水の被害地域などはお年寄りの記憶にも強く残っています。

「あそこの地区は昔から水が上がりやすい」「地震の時に電柱が沈んで地面が波打ってた」なんて話があれば、そこの土地は危険です。

また、地域の図書館に行けば昔の住宅地図を見る事ができます。

保管されているものの中から、一番古い物を探してみてみましょう。

私は60年ほど前の手書きのゼンリン地図をチェックしました。

買おうとしている土地が以前砂地や田んぼだったり、沼地であれば注意が必要です。



家を建てる際に気を付けたいことをいくつか挙げてみました。
これでもまだまだ完璧とは行きませんが、満足のいくお家を建てるための一つのお手伝いになれば幸いです。